2009年8月18日火曜日

【本】よりよい医学英語論文を書くための12のステップアップ



<ロバートLアイルズ著・引地岳雄訳 メジカルビュー社>

メディカルライターである著者がこれから医学論文を書こうとする人たちに向けて、明快な英語論文を書くためのポイントを解説してくれています。

■いい文章と同様、いい表は推敲によって、ときには度重なる推敲によってできあがるものです。最初の草案ができたところで、初めて見る読者の立場に立って吟味すれば、脚注が不明瞭だとか、脚注をやめて文章の中に入れる方がいいとか、コラムの見出しがデータの性格をうまく表現していないとか、がわかってくるものです。ときには、表の中でのデータ項目は、自分には意味があるように思えたけれども、実際には2つの治療群に統計的な有意差がないことを示しているだけだ、ということを悟ることもありましょう。そのような場合には、Treatment outcomes were not significantly different.と文章の中に書きさえすればよく、表は不要です。

■もっと豊富に書く方法
<論文は数分ずつ書く>
…日もよりますが、7分以上そのような文章に集中できる人は少ないでしょう。なかには20分有意義に読める人もいるでしょうけれども。読む時の集中時間の半分があなたの書く時の集中時間です。書くのには、読むのより多くの精神的エネルギー必要です。
<サラミはスライスにするからおいしい>
…たとえば「材料と方法」(=Material and Methods)は被験者、診察、検査などに分けられるでしょう。そして被験者について若干の文を書き、診察について若干の文を書く、ということをしているうちに、その次その次…と食欲がわいてきて、順調に「材料と方法」を書き終えることができるのです。
<一度に1つのことをする>
文章を書くことと推敲とは別のこと。点検はまた別のことです。この3つを全部一度にしながら長い論文を書き終えることは至難のことです。
<最良の書くとき・推敲するとき>
文章を書くのに最良のときは、書きたいことが心に浮かんだときです。
推敲するのに最良のときは、人によって、文章によって違いますが、推敲するのに最悪なときは常に同じ
「文章を書いた直後」です。
<秘訣さまざま>
やる気満々で原稿にもどるには、着想とエネルギーが尽きる前に休憩するのがコツです。
…たいていの論文は、Who, What, Why, Howの質問に答えなければなりません。通常はそれにWhat does it mean? Why is it important かどちらかを加えた方がいいでしょう。

■考察は研究結果と仮説との関係を検討し、結果が仮説を支持するかどうかを述べるのが最大の役目です。ですから「結果」が完成して始めて「考察」に手をつけることができます。
考察で扱う項目には(1)なぜ新知見が重要か (2)事実相互の関係はどうなっているか あなたの論文で報告している事実だけでなく、ほかの論文や参考書などに書かれているものも含めて、それら相互の関係がどうなっているか、などがあります。相違するところ、矛盾するところがあれば説明するー少なくとも検討するーことが必要です。
考察で引用した論文を緒言でも引用する必要はありません。緒言ではその問題はほとんど解明されていないとか、その問題に関するこれまでの研究結果に矛盾があるとか、とだけ主張しておいて考察で詳細を述べ、文献を引用すれば良いと思います。

■引用文献は読者が情報源を自分で調べて、あなたが書いていることを検証できるように、そしてあなたが主張していることを完全に理解できるようにするためにあります。ある問題に関してあなたの主張を支持する論文が1つあれば十分で、いくつもの文献を引用する必要はありません。(選択の順番→最も精度の高い研究を1つだけ引用する→精度に差がなければ最も新しい研究か、最も患者数の多い研究を引用します)

2009年8月15日土曜日

【本】あと千回の晩飯


<山田風太郎・朝日文庫>
30回目のハワイに来て、手にした本がこれでした。山田風太郎さんの小説は読んだことないのですが、この本はとてもおもしろかったし、示唆に富んだ作品だと思いました。どんなお顔の方なのかなあ?と思い、googleの画像で検索したら、なんとなくイメージした通りの人でした笑。

高齢期について
■人間の最後の尊厳性を守る一本のフンドシ、それさえムシリとられたあとは、ごく少数の例外をのぞき、客観的に見れば私には、ほとんど生きている意味がないように思われる。「無意味なる生」である。
それはごめんだ。だれでもいやだろう…

■…こういう話を聞くと私は、神は人を祝福をもって生まず、悪意にみちたカリカリュアとして生んだのではないかと疑わずいはいられない。そして人間に対してのみこの感が起こる。他の動物はこんな醜態をさらすことなく、ほかからの介護者もなくひとりで荘厳に死んでいく。

死を考えて生きること…とても大切じゃないかと思います。