2009年9月1日火曜日

【本】禁煙外来の子どもたち その後

             <高橋裕子著・東京書籍>



本の帯には、
『タバコを吸う子どもたちを次世代に残さないこと。 このことは私たちの世代の大きな責務です。』と書かれています。
喫煙が様々な疾病のトリガーになっていることは、数多くの疫学研究から明らかになっています。次代を担う子どもたちが生涯にわたって健康で居続けられるよう、喫煙から子どもたちを守ることに対して、もっと真剣に考えていかねばならない…そう思わせてくれる本です。



<タバコがやめられないというのは、脳細胞にできる病気です>
未成年者の場合では、数回の喫煙でもニコチン依存が形成されることがわかってきました。タバコがやめられないという状況は、いわゆる趣味や趣向や習慣の問題ではなく、脳細胞の病気であるということがはっきりとわかってきています。
■喫煙習慣はニコチン中毒という「病気」、つまり、医療的な視点からのサポートを提供すべきだということです。
■たとば学校での喫煙生徒に対して厳しい意見が社会からだされますが、専門家グループ(多くは医療関係者)とそれ以外の学校関係者の間では認識の乖離が見られ、それが教育現場における混乱の一因につながっています。そこでまず、喫煙における健康への悪影響や、必要な治療に関する医療的な認識の共有が両者に求められ、その共有認識にもとづいた新たな禁煙教育の実施が教育現場で求められなければならないのです。
■一酸化炭素による血液の酸素分圧の低下、記憶能力の低下、運動能力の低下
■未成年者の喫煙の問題は、放置すればするほど成人より大きな健康障害を引き起こす。
■未成年とくに15歳以下の喫煙ではニコチン依存の形成はかなり早くなる特徴のあることがわかってきた。
■喫煙開始要因についての分析から、根本にある「好奇心」に「身近さ」「入手しやすさ」「社会規範の希薄さ」「有害性の知識不足」が加わり、ごく微な日常的なきっかけで喫煙をはじめていく姿が見えてきます。

■さかのぼれば教員養成課程の段階においてその重要性から喫煙防止教育を必修化することも検討すべきかと思います。
■和歌山大学は国立の大学ですが、教員になる人を主に養成する、そういった使命を帯びています。学校の教員になる人が喫煙をしているようでは、その教えを受ける子どもたちの禁煙はおぼつかない、という信念に基づいて大学敷地内禁煙を達成していただきました。
■中学生の喫煙は、実は小学校低学年からはじまっていることがわかります。
■タバコをめぐる処分として考えた場合は、まず禁煙の治療を受けさせることを前提条件としていただきたい。
■…つまり喫煙を開始する人たちと、そうでない人たちにわかれるのが20代までであり、女性喫煙者の例を除くと30代からの喫煙はごく少数といえます。それはタバコを吸いたいというのは、20代の前半までの「成長の一時期に起こる要求」であるといえます。
■ICD10 においては、タバコ(ニコチン)、アヘン類、アルコール、コカインはほとんど同じ作用機序を持つ「精神作用物質使用による精神及び行動の障害」という項目に分類される疾患であると、明確に定義されています。つまり、子どもたちに限らずタバコがやめられないという症状は、脳細胞への反復されるニコチン摂取により脳細胞が異常を起こした状態としてとらえられ、疾患であるのだから治療をする、という方針が打ち出されているわけです。

■母親の喫煙→喫煙に関する子どもたちの心理的なバリアを著しく低くしていることがうかがわれます。
■日本においても健康日本21では2010年には未成年の喫煙はゼロとする目標設定がなされています。